ミツバチの社会性行動の分子基盤の解明に向けて

摘要

私が研究対象としているミツバチは，蜂蜜やローヤルゼ リ一，プロボリスなどの恵みを与えてくれる馴染み深い昆 虫です。古代エジプト時代の壁画には既に蜂蜜の採取や保 存の様子が描かれていることから，養蜂の歴史が如何に古 いかわかります。また，花粉媒介者としても重要な役割を もち，ミツバチの恩恵の中では，農作物の受粉による経済 的利益が圧倒的に大きいそうです。このようにミツバチは 我々の身近な生活に深く関わっている一方，様々な社会性 行動を示すことから，基礎生物学における研究対象として も古くから注目されてきました。ミツバチは真社会性昆虫 であり，生殖個体である1匹の女王蜂と，非生殖個体であ る数万匹の働き蜂，そして春から夏の生殖期に一過的に産 出される雄蜂からなるコロニーで生活します。働き蜂が育 児や清掃，門番，採餌などの様々な仕事を適切に分業する ことでコロニーは存続しています。さらに，動物行動学の 創設に貢献したカール.フォン.フリッシユは，ミツバチ がダンス言語と呼ばれる記号化コミユニケーシヨンを用い て餌場の情報を他の仲間に伝えることを明らかにし，1973 年にノーベル賞を受賞しました。