担好熱古細菌の代謝およびエネルギー産生

摘要

一般的な生物の主要な代謝に関しては，代謝経路および経路の反応の触媒である酵素やその働きを助ける補酵素に関する研究は，すでに20世紀にほぼ完了している．しかし1980年代以降に発見されたものが多数を占める古細菌，とりわけ超好熟古細菌については，代謝経路および関連する酵素に関する研究は，今まさに新しい展開をみせ始めているところである．超好熟古細菌の中でも，嫌気性で無機硫黄を増殖に必要とする，あるいは無機硫黄により増殖が促進される超好熟古細菌を中′いこして，栄養源である糖およびペプチドの代謝に関する研究が急速に進展している．これらの研究から，超好熟古細菌の代謝系は，基本的には今まで知られている真核生物や真正細菌のものと似ているが，そこで機能している酵素や補因子，あるいは電子伝達体がこれらの生物のものとは大きく異なっていたり，－つの酵素分子が2種類の酉孝素活性をもつものがあることなどがわかってきた．これらは高温の環境に適応するためであったり，また大腸菌の約3分の1しかない小さなゲノムを最大限，効率良く使うための戦略かもしれないが，このような古くて新しい代謝に関する研究から，より原始的な生物の生きている姿が次第に明らかにされてきている．そしてさらに，このような研究から，地球上に初めて誕生した原始生命体の，よりシンプルな生きていた姿を推察できるかもしれない．