環境応答性ゲノムーーミジンコのゲノム

摘要

小学校の授業でもおなじみのミジンコ(Daphnia pwlex)のゲノム力解読さ れ，請が誌に報告された"。日本か らも東京薬科大学の研究グループが参 加している。本稿では，このゲノム解 読力；明らかにした内容とその意味につ いて概説したい。ミジンコはェピゃカ二と同じ甲殻類 に属する小さな動物で，昆虫類などと もに節足動物門を構成する。昆虫類に ついてはすでに多くの種のゲノムが解 読されているが，甲殻類としては今回 力初めての解読となる。甲殻類は昆虫 類の最も近縁な姉妹群と考えられてお り（汎甲殻類仮説2))，今冋の解読によ り汎甲殻類の共通祖先，およびそこか ら昆虫類と甲殻類への分岐について理 解が深まることが期待される。また， ミジンコは，甲殻類のモデルとして有 用であるばかりでなく ，生態的に興味 深い特徴を数多く備えた動物でもある。 ミジンコは世界中の静水域（湖沼）に 生息し，生産者である藻類の主要な--次消費者として食物連鎖の基盤的地位 を占める3)。また，環境に応じてさま ざまな形質を変化させるという特徴を もつ。たとえば生殖様式についても，繁 殖に適した時期にはメスがメスを産む 無性的な単為生殖を行う一方，環境が 悪化するとォスを産hで有性生殖を行 い，休眠卵として環境の好転を待つ。