サンゴmのゲノム科学

摘要

「次世代シーケンサー」の登場により，新規ゲノムの解読が従来よりもはるかに高速かつ安価に行えるように なってきた。サンゴゲノムの解読も報告され1)，実験生物だけでなくサンゴ礁に生息する生物についても分子' ゲノムレベルでの研究が可能になった。本稿では，サンゴ硏究分野へのゲノム科学の応用を，最近発表され たサンゴゲノムの概要を中心に解説していく。コバルトブル一に輝くサンゴ礁の海。 そこは地球上で最も生物多様性の豊か な場所の一つである。世界の海域のわ ずか1%に満たないサンゴ礁に，全海洋生物の25%の種が生息していると言われている。そのサンゴ礁を作り出し ているのが，「造礁サンゴ」という動 物である。一見すると岩に見えるサンゴは，実 はれつきとした動物である。水中のプ ランクトンを捕食もするし，サンゴの 一斉産卵はよく知られている（図1)。 彼らはクラゲゃィソギンチヤクの仲間で，刺胞動物に分類される。イソギン チヤクのような小さなポリプが集まつ て，一つの群体を形成している。サン ゴは細胞内に光合成を行う微細藻類，褐虫藻(Symbiodinium)を共生させて おり（図1)，栄養の大部分を褐虫藻に 依存している。