ウシ受精卵移植技術をめぐる最近の動向と課題：Ⅰ．クローンを中心とした繁殖新技術を支えるウシ受精卵移植技術の重要性

摘要

近年、体細胞クローンに代表されるように、家畜繁殖分野における新技術の開発競争が再び激化してきた。 今までの歴史が物語っているように、なにかブレイクスルーとなる技術開発や発表があれば、それまでの沈滞ムードがうそのようにその後の開発は一気に進むことが多い。 しかし、クローン技術が家畜の育種改良、優良個体の増殖を通して畜産の発展に寄与できるかどうかは今のところまったくの未知数である。 例えば、肉用牛の種雄牛作出システムにおける種雄牛候補の庭内能力検定において、初期胚クローン動物を使用するクローン検定を後代検定（間接検定）に置き換えようとする計画がある。 種雄牛候補を選抜するまでに要する期間、正確度、経費、および技術の成熟度を現行の直接検定と間接検定あるいは直接検定とフィールド検定の組合せの場合と比較した場合、クローン検定は前三者の指標では他を圧倒している。 当然ながら、今後の技術の進歩の程度、対象とする形質、その形質の遺伝率の高さなどによって現行の制度との相対的な位置関係は変わってくるものと思われるが、現時点では技術の成熟度の点において、それらより劣っているために現実の制度としては利用されていない。