牧草の低温耐性を誘導する遺伝子の単離および遺伝子座の同定

摘要

寒冷地におけるイネ科牧草の育種では、越冬性の向上が大きな目標の一つである。これまでに、公的研究機関や民間企業によって、いくつかの越冬性に優れるイネ科牧草の品種が開発されている。 しかし、いまだに越冬性が十分ではなく、さらなる越冬性の向上が望まれる草種もある。 越冬性は雪腐病抵抗性や耐凍性などの複数の要因が関与した複雑な形質である。 特に、北海道東部地域などの寒冷、寡雪地帯では、耐凍性が重要な形質である。 従来の牧草育種では、越冬性の選抜は主に圃場で越冬した後の冬損や再生の評価により行なわれてきた。この手法では、一年に一度しか評価できないこと、および地理的条件や年次の気象変動が大きく影響することから、精度の高い評価が難しいという問題点がある。