スピントロニクス，過去，現在，そして未来一スピントロニズム？-

摘要

スピントロニクスとは電荷以外に電子のもつ自由度であるスピンを利用するエレクトロニクスや関連する磁気物理の研究分野の包括的な呼称である.スピントロニクス研究は，1990年代に産声を上げ，その後20年以上もの間着々と進化し，現在に至ってもその勢いは衰えていない.この分野は歴史的に日本が強く，当学会でスピントロニクスの研究に携わる会員諸兄姉も，トンネル磁気抵抗効果，スピン移行トルク（スピントルク），スピンホール効果，スピンゼーベック効果など興味深い物理現象の発見やその関連研究の発展に大きく貢献している.この状況は，20世紀初頭に始まったデザイン，芸術や建築のモダニズムやボストモダニズム運動に似ている.従来の比較的保守的な絵画手法に飽き足らず，新しい表現手法を模索した抽象絵画のカンデインスキーやポップアートのアンデイーウォーホールのポスタ一や造形は，皆どこかで見たことがあろうかと思う.ここでは，このモダニズム運動にたとえてスピン卜 □ ニズムという造語を使い，2000年以前のプレスピントロニズム萌芽期，2000年頃から2010年頃までのスピントロニズム発展期，2010年以降のボス卜スピント□ニズム多様化期の3時代に分けてその発展を俯瞰したい.