重直磁気記録II第2章どうやって垂直磁気記録を可能にしたか

摘要

前章で，筆者らがなぜ垂直磁気記録の研究を始めるに至ったかを述べた．それは，VTRなどで顕著に表れる‘記録減磁’を解明することから始まった．磁性層が厚い磁気テープのような記録メディアでは，?記録波長が短くなり，これに比べて磁性層への磁化の浸透が深くなると，磁性層内で回転磁化モードが形成されやすくな．って再生出力が急激に減少する．このことが記録減磁の主要因であることを明らかにし，さらに，回転磁化モードに垂直磁界を加えると再生電圧が再び現れることを実験的に見いだして，最手方向に磁化容易な磁気テープでも垂直鮫化モードに変換されて垂直磁化で残せることもわかった．　 これに対しハードディスクの世界では，磁性粒を塗布したものでもスピンコートと研磨で磁性層を極力薄くするなど，早くから記録減磁を避けた記録メディアづくりをしてきた．このため，垂直磁化方式による高密度化の必然性を感じるには垂らなかったように思われる．しかし同じディジタル記録でも磁気テープ装遣では同様の現象が観測され，当時の電気通信学会磁気記録研究会で，日本電信電話公社(現NTT)武蔵野電気通信研究所の西川正明氏がこれを報告している．