ビッグデータから見たDICの抗凝固療法:アンチトロンビン製剤を再考する

摘要

アンチトロンビンIII (ATIII)製剤の治療効果のシステマティック?レビューとメタアナリシスは,播種性 血管内凝固症候群(DIC)症例に限定した解析では,ポジティブな結果が発表されている.ATIIIの「補充療法」は,わが国で独自に進化した治療法である.今後は，国際的なレジストリ研究, そして,症例を慎重に選択したうえで, ATIII補充療法のランダム化比較試験が必須である.敗血症は,頻度が高く非常に重篤な病態であり,治療 は早期の抗生剤投与や感染源のコントロールが中心となる. 以前より敗血症およびその合併症に対して,多く の補助療法が提唱されてきたが,それらの有用性に関し てはいまだに明確なエビデンスは示されていない.敗血 症に伴う重要な合併症の一つに敗血症性播種性血管内凝 固 症候群(disseminated intravascular coagulation : DIC)がある. 敗血症性DICにおいては,血中アンチ トロンビンIII (antithrombin III : ATIII)の低下をし ばしば認めることがあり，その予後との関連は多くの先 行研究で示唆されている.多くの基礎実験にて,敗血 症性DICの病態に対して,ATIII製剤が有用である可能性が報告されてきた.また,臨床研究においても, 敗血症性DICに対してATIII製剤を投与する治療法は, 1990年代より世界中で検討され,その有用性が示唆さ れていた.