<特集：信州昆虫学の将来、豊かな自然と多様性の継承>自然史研究の重要性とそめ活用

摘要

これまで地球上で記載されている生物の種数は約175万種であり.そのうち昆虫は約100万種を占めてい る.一方.植物の種の記載数が約27万種であるから. "虫は非常に種多様性が高い分類群といえる（熊澤， 2016).ぶも虫は「昆虫綱」にあたる分類群を指し31R からなり.なかでも特にコゥチュウH.チョウ目は もっとも種多様化した分類群で(Misof et al, 2014), それらの形態の多様さ，美しさなどから.研究者だけ でなく多くの人々の研究、観察対象になつている.「種多様性」と並び「生物多様性」という言葉を耳に する機会が多くなつて久しいが.これらを示すための 基盤となるものが「自然物，すなわち動物、植物-鉱 物の種類、分布、性質、生態などを記載する学問」(岩波書店，1998)と定義される自然史研究であり， 採取記録や観察記録のような知見や.新種記載などか らなる学術研究に不可欠な基礎的情報を示す分野とさ れている.自然史研究の報告は.一般的に.いつどこ でどのように採取されたかという情報とともに.採取 した標本の画像やスケッチなどからなる.上述のとお り，自然史研究は多くの分野、分類群を対象としてい るため全てを話題として取り上げるには非常に困難な ので，本稿では昆虫類を主な話題とし.自然史研究の 実例とそれを活用した研究の紹介することを通して. その重要性と将来像について述べていきたい.