睡眠障害と神経変性疾患現状と今後

摘要

神経変性疾患での睡眠障害は，かつてはその病 態との関連は密接なものでなく，筋力低下などの 結果としての睡眠呼吸障害や，難治性疾患に罹患 したための抑うつによる精神性不眠が主体と考え られていた時期もあったが，実際にはその病態生 理自体が睡眠障害を呈している場合がしばしばみ られることが判明しつつある。すなわち神経変性 疾患の睡眠障害を診ることはその病態解明，新た な補助診断，将来的な治療法の開発と重要な示唆 を与えるものと思われる。一方，多くの原発性不 眠症患者や精神疾患患者が深刻な不眠や過眠を愁 訴の中核とすることが多いのに比べ，概して神経 変性疾患では睡眠障害の訴え自体は乏しく，それ が神経変性疾患における睡眠障害が今まで注目を 浴びなかった理由と考えられる。