小脳の入出力神経回路と分子発現

摘要

小脳皮質を小脳核や小脳外の脳部位と結びつける入出 力神経回路は，小脳の部位局在性や小脳の動作にも大 きく関わると考えられる。一方，小脳皮質には，分子 発現バタンに特異な縦縞状区画化が存在することが知 られている。最近，小脳入出力神経回路の単一軸索の 投射の全貌が解析された。その投射バタンは分子発現 の区画に密接に関係していたので，分子発現パタンに 小脳の機能区分としての意義があることが明らかにな つた。このことは，ヒ卜の小脳病変における諸症状の 病態の理解，また，小脳の発生の理解に役立つと考え られる。小脳皮質は，前後の区分としては，横方向に伸びる溝によって肉眼的に10小葉に分けられる（哺乳類の場合)。内外側の区分は，明確な肉眼的目印 はないが小脳の機能の上では重要であり，入出力 線維連絡の違いと機能の違いに関係している。例 えば，内側の虫部は，主に同側の体幹筋と四肢近 位筋を支配し，中間部と半球部は，主に同側の四肢遠位筋を支配することが1980年代までに知られ ていた。