揖斐川の氾濫原水域における沈水植物群落の分布と成立条件

摘要

氾濫原は，河川の洪水時にあふれた水によって浸水す る範囲であり，生物生産および生物多様性にとって重要 な景観要素のひとつである（Tockner＆Stanford2002； 永山ほか2015）．近年の都市化の進行により，沖積平野 の大部分が開発により消失し，多くの氾濫原が失われた （Mitsch＆Gosslink2000；富士田ほか2011）．国内にお いても後背湿地が資源採取の場として利用されるととも に，活動の場として大規模に改変されることで（鷺谷 2007），氾濫原は河川の河道内や周辺の水田など極めて 限定的な範囲に残されるに至った（鷺谷2007；永山ほ か2014，2015）．しかし河川の河道内に残された河道内 氾濫原（永山ほか2015）では，複合的な人為の影響に ともなう河床低下や滞筋の固定化により水域と陸域の比 高差が拡大し，冠水頻度の低下や樹林化が引き起こされ ている（永山ほか2014，2015）．河道内氾濫原における こうした環境の変化は，ワンド，たまりといった氾濫原 水域（永山ほか2015）の環境を劣化させ，イシガイ類 など生物の生息を制限する（Negishi et al．2014）．