2010年のモバイル·キー·テクノロジーと移動通信事業者の未来に関する一考察

摘要

1994年の携帯電話売切り制度導入を皮切りに、急激に普及した日本の移動通信市場が、いよいよその普及速度に陰りを見せ始めている。 すなわち、パーソナルをターゲットとした通信市場のうち、とくに通話を満たすデバイスとしての携帯電話の普及には限界が見え始めてきたと言えよう。 このような背景から、近頃「移動通信市場は価格競争が激化している」など、市場成熟期としての競争環境変化が報道されることが多くなりつつある。今後移動通信事業者各社は、市場成熟期における戦略立案をより鮮明に求められる段階にあるのかもしれない。 しかし本当に市場は成熟してしまったのであろうか。これまで移動通信市場は一見順風万帆に成長してきたように見られがちであるが、実際はモバイル·インターネットという新しいテクノロジーとサービスを組み込み、付加価値を大幅に高めたことが、その持続的な成長を大きく下支えしてきた実態がある。 そこで本稿では、今後の移動通信市場の成長をあらためて問い直すために、今後市場環境に影響を与えるであろう主要なキー·テクノロジーについて概観し、テクノロジーが及ぼす移動通信業界への影響について考察したい。 本稿では第4世代移動通信システム（Systems Beyond IMT-2000: 通称4G）に着目する。 なぜなら4Gのコンセプトには、今後の移動通信業界の姿を変革しうる要素技術が多分に含まれているためである。 以下4Gの要素技術を概観するとともに、移動通信事業者の未来に与えるインパクトを考察したい。