表層強ひずみ加工と高周波焼入れによるS45C 焼戻しマルテンサイト鋼の織制御

摘要

これまで本研究室では、高速回転する試料に超鋼 チップを押当てる加工（摩擦加工）によって、試料 表層に均一な超微細結晶粒組織（UFG）が生成する ことを明らかにした。摩擦加工は、加工発熱を利用 して塑性変形領域を極表層に限定するため、種々の 硬度の鋼種に適用でき、一般的な工作機械で短時間 にUFGを生成できる。しかし、塑性変形域が極表層 に限られるため、生成するUFGが薄く、十分な層厚 さの高硬度層を得ることができない。また、加工発 熱を利用するため、生成するUFGの直下に高温で焼 戻された軟化部が生じるという欠点がある。 そこで本研究では、熱処理前組織を有効に利用で きる高周波熱処理(IQ)に着目し、摩擦加工後にIQの 中でも超急速加熱であるSRIQを行い、組織制御の 可能性を検討した。IQは短時間加熱であるので、熱 的安定性の高いUFGは殆ど粒成長せずに微細結晶 粒組織を呈する可能性がある。また、IQによって UFGの下部にマルテンサイト組織が生成すれば、高 硬度層の増加と軟化部の強化が可能だと考えた。