( S244) 低合金TRIP 鋼の低温引張変形と加工誘起マルテンサイト変態挙動

摘要

残留オーステナイト(γR)の変態誘起塑性(transformation induced plasticity : TRIP)による伸び改善効果を利用した低合金TRIP 鋼が自動車用構造部品鋼材として実用に至っている1)。このTRIP 効果は、γR が軟質な母相フェライトの変形を緩和するように加工誘起マルテンサイト変態を生じることで発現し2)、γRの相安定性がその制御に重要となる。γR 相安定性に影響を及ぼす因子には、炭素濃度、存在形態、温度、組織間の変形能差に起因する内部応力3)などがあり、様々な研究がなされている。著者らは、室温変形下で残存するγR が引張方向に対して{111}γ に近い方位を有すること、一方、77 K ではほぼ全てのγR が変態したことを報告した4)。そこで、室温と77 K との温度範囲において相間の相対強度差を変化させ、TRIP 鋼の変形挙動に及ぼすγR の加工誘起変態挙動と相安定性の結晶方位依存性について検討した。