トランプエレメントの混入を考慮した動学廃棄物産業連関モデルの開発

摘要

本研究では従来の産業連関表における粗鋼および鋼材部門の部門分類においては、普通鋼と特殊鋼についての鉄スクラップの需要格差を見ることが出来なかった点を改善し、また普通鋼と特殊鋼の分類を粗鋼生産及び鋼材部門に反映させることで、普通銅と特殊鋼、鋼材別の比較を行った場合の環境負荷を推計可能とした。 トランプエレメント混入による資源循環の阻害を考慮し、経済波及効果を推定しつつわが国における産業全体を包括した環境影響評価を行った研究はまだあまり例がない。生産から廃棄まで時間差を伴って発生するスクラップの質と量を把握し、その動的資源循環と経済効果を考えることは、持続可能な社会構築のために必要性が高いと考えられる。 本節で提案する動学的鉄資源循環分析モデルはこのような社会的要請に応えることを目的としたものであり、今後更なる詳細な表整備、寿命や技術変化等の動的シナリオ変化に耐えうるモデルの拡張や感度分析によるシナリオ分析結果の妥当性の検討などを行う必要がある。