ヒトiPS細胞を用いた心臓再生医療の現状と今後の展望

摘要

拡張型心筋症や虚血性心筋症などにより心臓 のポンプ機能が著しく低下し，重症心不全を発 症するケースは極めて予後が悪く，内科的治療 抵抗性を示すため心臓移植が唯一の根本的治療 法である.しかしながら，移植治療における成 績に関しては向上しているとはいえ，本邦では心臓移植件数が年間約50件程度とドナー不足 が深刻である状況が続いており，心臓移植治療 を受けるまでの待機期間は，平均で約1,200日 (3.3年）と延長の一途をたどっている.重症心 不全患者にとって3.3年という期間はあまりに 過酷で，その間に亡くなる方も多いのが現状で ある.また，年齢制限や併存疾患により，心臓 移植の適応から外れる患者も多く存在し，そう いった患者には希望となる治療の選択肢がな い.そこで，心臓移植治療の代替治療法とし て，ヒト人工多能性幹（induced pluripotent stem: iPS)細胞を用いた心臓再生医療が注目を 浴びている.