低体温症，凍瘡?凍傷

摘要

1.低体温症:1)はじめに:生体には熱産生と熱放散を通して，体温を一定に維持する体温調節機構が存在する.その体温調節機構の中心的役割を果たしているのが，視床下部にある体温調節中枢である.体温調節中枢は，体性神経系-自律神経系-内分泌系を介して，熱産生と熱放散を行うことにより体温を一定に保っている.例えば，寒冷刺激に曝露されるとこれらの神経-内分泌系が刺激され，悪寒/戦傈(shivering),末梢血管収縮などの寒冷反応と呼ばれる防御反応が起こり体温を保持する（図1).しかし，著しい寒冷環境に曝露された場合や，小児や老人のように体温調節機構が不十分な個体では，熱産生が熱放散に追いつかず低体温(深部体温が35°C以下）に陥る.低体温の発生には，温度，湿度，風力，曝露時間などの環境要因と栄養状態，疲労度，体の保湿状態，衣服，寒冷に対する感受性などの個人的要因が影響する.また，小児や老人などの年齢的な要因だけでなく，基礎疾患の存在も低体温の危険因子である.体温が低下すると，初期には寒冷反応が出現する.寒冷反応は，体温が35°C前後で最も強く出現し，30?32°Cまで低下すると寒冷反応は認められなくなる.体温が30°C以下では意識障害(cold narcosis)が出現し，体温の低下と共に呼吸-循環-代謝系が抑制される.体温が25°C以下では，心室細動や心停止，呼吸停止を来す.