細胞系譜解析による大腸腫瘍幹細胞特異的な因子の同定

摘要

iPS細胞に関わる新知見に代表されるように， この10年あまりで幹細胞に関する研究が急速に進み，それぞれの臓器には「自己再生能」と「子孫を供給す.る能力」をもつ組織幹細胞が存在 することが明確になってきた.元来腸管は，上 皮細胞のターンオーバーが比較的速いために， 組織幹細胞について研究するうえで良いマテリ アルとされてきた.腸管の組織幹細胞は陰窩底 部付近に存在すると考えられていたが，組織幹 細胞を絞り込むための具体的な「マーカー」につ いては不明の点が多く，それらを利用した幹細胞の動態や機能の解析は困難であった.しかし近年，fluorescence -activated cell sorting (FACS) 技術の進歩や，遺伝子改変マウスを用いたlineage tracing (細胞系譜解析）の普及によって， CD133やleucine-rich repeat-containing G protein-coupled receptor 5 (Lgr5)など，正常腸管 の幹細胞マーカーが多数同定されてきたそ れと同時に，腸管のがhにおいても，正常腸管 組織に対応するカウンターパートとしてのがh幹細胞に関する研究が進hだ.