多点支持装置による金型のインプロセス挙動可視化

摘要

FEMを含む数値解析システムやデータベースなどの情報技術（IT）により，塑性加工プロセスや金型の設計において，製品の欠陥や精度に関する予測が効果的に行われている．しかし，加工プロセスのシミュレーション手法やソフトウェアシステムがより高精度化すればするほど，金型やプロセスがおかれた実際の状態の不確実性に起因する問題に対し，対処する能力に限界があることが明らかとなってきている．すなわち，加工プロセスや金型の分析モデルに対し，その加工が実際に実施される加工機の運動の機差，機構の遊びや弾性変形に依存する不確実性のため，分析モデルは実際の現象との対応に必ず妥協を強いられる．例えば，大型の探絞り成形用金型は，成形プロセス中で容易に弾性変形するが，その変形は金型のセットアップと機差（例えば，機械や床の剛性の差，スライドギブの調整，クッションの応答の違い）に影響され，金型とスライドやボルスタとの接触状態すら，実際と数値モデルでは異なるであろうことが推察される．被加工材は降伏により変形するため，加工プロセスを構成する系の一部である被加工材の変形だけ取り出してモデル化をすることは効果的であるが，金型の弾性変形は弾性構造のループの中での釣り合いによるため，金型の弾性変形モデルとそれと接触する材料変形モデルだけ系から取り出してその変形を分析することには本質的な限界がある．