産学官共同材料技術開発情報：人工筋肉を目指した高分子電解質アクチュエーター技術

摘要

高分子電解質アクチュエーターはフッ素系イオン交換樹脂などの含水高分子電解質ゲルに貴金属を接合した接合体で、0.5～3V程度の低電場に応答して接合体が変形する現象を利用してその接合体をソフトアクチュエーターとして応用しようとする技術である（図1）。 産総研関西センターの前身の大阪工業技術研究所（試験所）では、ニューサンシャイン計画の中で固体高分子電解質を用いた水電解法による水素製造の研究が行われており、イオン交換膜への電極の無電解めっき終による接合技術の蓄積があった。 その中で、ソフトアクチュエーターの研究を行っていた小黒（現、産総研技術情報部）が、1991年、世界に先駆けてこの接合体の電場応答現象を発見した。 その後、当所では、この現象の応答機構の解明、動作特性の改良、ソフトアクチュエーターヘの応用研究を行った。1995年からは産技プロジェクト「高度刺激応答」のテーマとして、医療機器メーカーと共同研究を行い、応答特性は飛躍的に向上した。 その応答感度·速度、また、耐久性の面から、十分実用的な高分子アクチュエーターとして世界的な注目を集めている。 また、この研究は世界的にも広がっており、高分子アクチュエーターに関する国際会議では、このアクチュエーターに関するセッションがあり、20数件以上の発表がある。