新規環状ペプチドワクチンの開発 HIV-1コレセプターに対する自己抗体誘導によるHIV-1感染阻害

摘要

国連の対AIDS戦略実行機関であるUNAIDSの報告によれば,2002年末現在,生存しているHIV感染者は推定4,200万人に及び,その感染はサハラ以南アフリカに集中し,現在確実に南アジアおよび東南アジアでも拡大している.そのため感染防御能力のあるAIDSワクチンの開発が急務とされている.しかし不運にも,AIDSワクチンの開発はウイルスの変異の早さと多様性という問題のために大きな進展がないのが現状である.そこで筆者らは,HIV-1由来の蛋白質を標的とした従来のAIDSワクチン開発の基本概念から逸脱し,HIV-1コレセブターであるCCR5およびcxcR4に対する自己抗体を生体に誘導することで生体の守りを固め,ウイルス侵入を防止することを目的とした新親環状ペプチドワクチンの開発を進めてきた.ウイルスの変異の早さと多様性に柔軟に対応するための新規AIDSワクチン戦略を提唱したい.