細胞の接着とシグナリング

摘要

多細胞生物では個々の細胞がたがいを正しく認識して細胞間接着を形成し，細胞内にシグナルを伝達する（シグナリング）ことにより正常な組織や臓器の形成，神経回路網形成，創傷治癒などの高次生命現象が制御されている．一方，細胞間接着の破綻は炎症や癌などさまざまな病態の原因となっている．　 これまで細胞間接着の形成においてカドヘリンが接着分子として重要な働きをしていることが知られている．しかし，生体内の種々の夕イプの細胞間接着をカドヘリンだけで説明できない現象も多く見出されている．著者らは新しい接着分子ネクテンが，カドヘリンと協調してあるいは非依存的に，種々の夕イプの細胞間撞着の形成に重要な役割を果たしていることを明らかにしている．また，ネクテンが細胞間接着の形成だけでなく，細胞内シグナリングや細胞極性の形成にも直接関与していることも明らかにしつつある．