抗がh剤の薬理学 薬物動態学と薬力学

摘要

薬物動態学（pharmacokinetics）は投与された薬剤を人体·臓器がどのように扱うかを研究する領域であり，薬力学（pharmacodynamics）はその結果として得られる薬効や有害事象を対象とする．抗癌剤は殺細胞作用が主作用であり，最大耐用量の投与が原則であるため有効治療域が狭く，程度の差はあるが有害事象は必発である．したがって，薬剤の適切な投与量·投与法を確立するために，薬物動着学·薬力学の研究は癌化学療法の領域でとくに重要である．臨床的には薬物濃度·時間曲線下面積（area under the concentration vs．time curve：AUC),最高血中濃度peak plasma concentration：C_(max),一定常状態血中濃度（steady state concentration：Css）などを薬物動態学的パラメータとして有害事象との関連を評価している.遺伝子レベルで薬剤代謝の患者間格差(inter－patient variability)を検討する遺伝薬理学(pharmacogenetics)の試みもはじまつており,抗癌剤の薬理学は今後の癌治療がめざしている個別化した治療，いわゆるテーラーメイド医療（tailor－made therapy）において重要な役割を演じるものである．