医薬品等の費用対効果評価の事例—高額医薬品の医療経済分析

摘要

医療の分野で費用対効果の評価が注目されている.本稿では，プロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害薬の費用対効果分析を紹介する.マルコフモデルを適用して，冠動脈3枝病変患者に対す るPCSK9阻害薬の費用対効果を公的医療費支払いの立場から30年間の観察期間で分析した.PCSK9阻害 薬の効果はFOURIER試験とCREDO Kyoto試験に基づいてモデルを作成した.標準治療(スタチン）に対す るPCSK9阻害薬の増分費用対効果比(ICER)は，1,345万円/QALY (質調整生存年）であった.さまざまな データを組み合わせてモデルを作成し費用対効果の分析をしているので，論文を読む場合には分析結果を慎 重に解釈する必要がある.また，主解析結果だけではなくシナリオ分析や感度分析を確認し，どのパラメ一 タが費用対効果の結果に大きく影響しているのか，どの患者では費用対効果がよい(悪い）のかを確認するこ とが重要である.