川崎病冠動脈病変の早期動脈硬化への進展

摘要

川崎病が発見されて40年以上が経過し，小児期に川崎病を罹患した患児たちが成人するようになった近乳川路病罹患後の慢性期に，急性心筋梗塞や不安定狭心症などの虚血性心疾患がしばしば認められるようになってきてしミる．しかし，川崎病症例において冠動脈瘤を形成していない冠動脈壁にどのような変化が慢性期に起こっているのか，いまだ不明な点が多い．著者らがこれまで行った川崎病剖検例の検索によると，川崎病罹患私比較的短期間に死亡した症例の冠動脈瘤形成部位では，内弾性板や中膜構造は炎症により破壊され，内腔には閉塞性の血栓が形成されていた．また，動脈瘤の形成がみられない冠動脈部位においても著明な新生内膜が形成されており，内腔の狭小化が認められた．また，川幅病遠隔期症例では，川幅病罹患後のfollow－up血管造影で一見正常にみえる冠動脈壁にも明らかな動脈硬化性内膜肥厚が認められ，これらの動脈硬化性病変には分化型の平滑筋細胞のほかに，脱分化型フェノタイプの平滑筋細胞が認められた．このように，川幅病の冠動脈の新生内膜病変は動脈硬化性プラークへと進展し，さらには不安定プラークへと変貌しうること，そしてこれらの病理的プロセスが最終的には不安定狭心症や急性心筋梗塞の発症につながる可能性が示唆される．