哺乳類成体脳における神経再生－内在性神経幹細胞を用いた神経再生の可能性－

摘要

長い間,哺乳類成体脳は一度完成してしまうとニューロン新生は皆無であると考えられてきたが，近年の研究より成体脳においても自己複製能と多分化能を有する神経幹細胞が存在し，嗅球や海馬歯状回において新生ニューロンが生まれていることが明らかとなった．このことば成体脳においてもニューロン新生が起こりうる潜在性を示しており,神経再生研究の根拠になっている．著者らの研究室では以前よりchlorin e6という発色団を吸着させたナノ粒子を投射ニューロンに取り込ませ，可視光レーザーにより特異的に細胞死を誘導する方法を開発していたが，この特殊な細胞死誘導が移植細胞の移軌ニューロンへの分化促進のみならず，内在性神経幹細胞のニューロンへの分化誘導をも引き起こすことが明らかとなった.本稿では哺乳類成体脳における神経新生とともに，内在性神経幹細胞を用いた神経再生の可能性について述べる．