絨毛性疾患：診断?治療Update-取扱い規約(第3版)の要旨と，胞状奇胎の病理診断のポイント

摘要

胞状奇胎は胎盤のもとになる絨毛組織が正常に発育せず絨毛が囊胞化する異常妊娠で，近年，早期の奇 胎診断が可能となつた結果，典型的な所見を呈する前に娩出され全奋胎と部分奇胎の鑑別が難しい症例が増え，病理診断にも混乱が生じていた.2011年7月に改定された『絨毛性疾患取扱い規約一第3版』 においては早期の奇胎症例に対応した大幅な改定がなされた.しかし実臨床では新しい取扱い規約に準 じた病理診断が十分に浸透しているとはいいがたく，さらなる周知?啓蒙が必要である.全奋胎は，12 週以降はほとhどの絨毛間質が水腫化し，典型的な病理所見を呈するが，8週以前の早期全奋胎において は，水腫化を呈する絨毛は一部で，絨毛の多くは水腫化していない.実際の病理診断においては①早期全 奇胎，②(典型的）全奇胎，③部分奇胎，と診断基準を3つに分けることが肝要である.本稿では，胞状奇 胎を含めた絨毛性疾患の診断?治療に関して解説する.