Alzheimer病の精神免疫学的所見

摘要

従来,中枢神経系内は免疫反応が起こりにくい場所と考えられてきた.この理由として,血液脳関門の存在や,リンパ球組織の欠如によって免疫グロブリンをはじめとする液性免疫やリンパ球を中心とした細胞性免疫が中枢神経に浸潤しにくいという点がある.同様にAlzheimer病(Alzheimer's disease : AD)においてち,変性疾患であり,ただ神経細胞が変性し死滅するものと考えられてきた.しかし, AD脳のサイトカインの反応をみるかぎりでは,多発性硬化症に匹敵する免疫反応が認められている.また,ミクログリアや補体などによる免疫反応も認められ,これらが神経原線維変化や老人斑アミロイドから神経細胞脱落の過程に重要な影響を与えている可能性が示唆されている.