栄養と肝移植-生体肝移植における経験－

摘要

肝移植は1963年のDenverにおける第一例にはじまり，1970年代後半のシクロスポリン，1980年代後半のタクロリムスの臨床応用で移植成績の向上が得られ，アメリカだけでも毎年5，000件あまりも行われている．肝移植術前における栄養管理では末期肝不全状態の患者がほとhどであることから，腹水，脳症，感染症に対する管理が主となる．補充療法で対処しきれない場合は，血漿交換を考慮する．肝移植後短期においては，肝機能，免疫抑制剤の副作用などを考慮に入れ，水分のバランスを厳重に監視しながら管理しなくてはならない．肝移植後長期においては，栄養指導による理想体重の維持と免疫抑制剤の副作用と思われる高脂血症，高血圧，糖尿病，腎機能障害などに対しての栄養学的な考慮が必要である．当科では，小児例の3/4で術後成長の著明な改善が得られていることから，肝移植は栄養学的にみて成長の面でもQOしの向上に役立っているといえる.