手術侵襲とプロテアーゼインヒビター－プロテアーゼインヒビターによる手術侵嚢の軽減効果－

摘要

手術後は手術侵襲に対する生体反応の結果として，高サイトカイン血症を伴うsystemic inflammatory response syndrome（SIRS）の状態となる．この状態では単球が活性化され，TNFα産生能やCD11b intensityが増加するばかりでなく，血液の流動性に密接に関与する血管内皮細胞も単球の活性化を介して活性化され，微か循環不全から臓器障害などの重篤な病態となる準備状態となっている．つまり，これらの細胞の活性化を抑制すること，すなわち手術侵襲をすこしでも軽減することが術後合併症の発生頻度を減じるために重要である．セリンプロテアーゼインヒビターであるメシル酸ガベキセート（gabexate mesilate）は細胞内伝達物質であるnuclear factor kappaB（NF_(kappa)B）活性の抑制を介して単球活性化および血管内皮細胞活性化抑制作用を発揮する．また，食道癌手術症例における麻酔導入直前からのメシル酸ガベキセート持続投与にょって手術億襲の軽減効果を認めたことから，プロテアーゼインヒビターは手術憬襲軽減効果を著し，術後の回復過程に良好な効果を有するものと考えられる．