抗菌薬の弊害一病院医の立場から

摘要

ウィルス性疾患である風邪症候群に抗菌薬を使用することは，入院する兒を診る病院医にとって， ?重症感染症の診断を困難にする，②培養による起因菌の同定を困難にする，③地域の耐性菌を増や す，④地域の耐性菌感染により基礎疾患を抱える児のリスクが增すことにつながる.感染症の診療原 則は，どの臓器がどの微生物によって感染を起こしているかを考えることに尽きる.臓器と微生物診 断が不在のまま，熱が続くからという理由で，抗菌薬を投与したり，広域抗菌薬に変更することは， 病態把握をしないで治療しているのに等しい.熱に抗菌薬が効くのではなく，治療が必要な細菌感染症であれば効くのである.また近年は，Hib {Haemophilus influenzae type b)や肺炎球菌ワクチ ンが導入され，髄膜炎や敗血症は減ってきている.プライマリ?ケアにおいてワクチンを推進するこ とも同様に重要である.