パーソナリティ障害のうつ状態 一境界性ノ-ソナリティ障害について一

摘要

パ一ソナリティ障害をもつ者は，その病理に応じた社会不適eを示し，しばしばうつ状態を合併する.日常診療場面でしばしばみられる境界性パ一ソナリティ障害を例にとれば，その治療においてはうつ状態のみならず，並行して怒りの制御困難を言めた気分失調，衝動行為，過剰な猜疑心や精神病症状などへの治療的配慮が必要となる.精神療法か'治療の主体であり,薬物療法はそれを下支えする位置づけである.薬物療法は効果を過剰に期待しすぎす，気分安定薬，抗精神病薬を中心とした処方を行う.同時に処方薬への依存の問題や，奇異反応，衝動行為·自殺手段として大量服薬された場合の安全性を言めて内容を検討し選択する. 最初の治療目標は「衝動的行動のコン卜ロール」であり，本人の希望である「情動（不安o抑うつ）の克服」には置かず，大局的な見地からのマネジメン卜，生活指導，精神療法的介入を行っていくことが望ましい.