培養細胞移植による毛包再生治療の開発に向けて

摘要

増幅可能な培養毛乳頭細胞を利用した毛髪再生医療の確立に向け基礎研究を行った.毛包下端 の毛球部に存在する毛乳頭細胞は毛包誘導能を有していることが知られ，これまで動物実験にお いて毛乳頭細胞を使用した毛包再生の報告は多数存在する.このことを踏まえ，臨床応用を目指 した毛包再生治療の開発に取り組hだ.培養細胞による毛包再生は大きく培養法と移植法の最適化を必要とする.そこで，まず移植法 の最適化を動物モデルで検討し，臨床の場で施術可能な方法で，胎児や新生児の表皮細胞を併用 しなくとも毛包を再生することに成功した.次に再生毛包の数や質を向上することを目的として 培養法の最適化を検討した.ケラチノサイ卜の培養上清成分を中心に検索した結果，1alpha，25-clihyclroxyvitamin D3 (VD3)が培養ヒ卜毛乳頭細胞の毛包誘導能の指標とされるALPや， 毛包発生初期に必要なシグナル因子であるTGF-beta2, Wnt1Ob遺伝子の発現を亢進する作用が あること，移植前にVD3を培地に添加することにより，移植後に再生される毛包の数や質が改善 される可能性が示唆された.