大腿静脈穿刺による中心静脈力テ一テルが 下腹壁静脈に迷入し腹直筋壊死をきたした1例

摘要

症例は86歳，男性.他院入院中に右大腿静脈より中心静脈カテーテルが挿入された.挿入後17日目に発熱と右 側腹部の発赤，腫脹を認め，壊死性筋膜炎の診断で当院へ紹介された.精査の結果，中心静脈カテ一テルの下腹 壁静脈迷入に起因した腹直筋膿瘍と診断し，緊急手術を施行した.壊死した腹直筋を除去し，カテーテルを抜去 した.創部より排膿が遷延したため，手術より1週間後に残存壊死組織およびカテーテルの瘻孔切除を行った. 大腿静脈穿刺による中心静脈カテ一テルの下腹壁静脈への迷入により腹直筋壊死をきたした稀な1例を経験した. 中心静脈カテーテル留置の際は，カテーテル逸脱の可能性を常に念頭に置いておくことが重要である.