腹部大血管損傷

摘要

腹部血管損傷は穿通性外傷に伴うことが多く， 鈍的外傷が中心となる本邦やヨーロッパ諸国ではその頻度は高くない。腹部の刺創では10%程度， 銃創では25%程度に血管損傷が見られるが，鈍 的外傷では5%に満たないとされている。しか しながら消化管をはじめとした他臓器損傷を合併 することも多く，そのため死亡率は高い。治療に 当たる外科医は，複数臓器の脱転や血管の露出， 出血のコントロールなど，時に困難な手技や判断 を要求される。本稿ではそのために必要な手術手 技を中心に述べていく。