N対1通信における適応バックオフ制御方式の実証と考察

摘要

従来のバックオフ制御には、CW（Contention Window）値の初期値を小さな値から始めて、再送の度に待ち時間を増やしてタイミングを分散させるBEB（Binary Exponential Backoff）方式が用いられている。よって、端末台数が多い場合には、再送が多数発生して全端末の通信完了時間が長くなる。筆者らはBEB方式の改善案として端末台数に応じた最適なCW値を設定するRANDOM方式を提案し、スロット時間の設定を変更した場合でも全端末の通信完了時間が同じであることや、フレーム長を変えてもRANDOM方式が有用であることを実証した。また、Bianchiによって提案されているモデルでは、衝突検知時間Tcと端末台数Nに応じてCW値の最適値を求めることが報告されている。本研究では、このBianchiモデルについて実際の運用状態での検証実験を行った。この結果、CW値はルーティングテーブルを作成するために必要なHelloパケットの時間も含めて求める必要があり、CW値の最適値は、運用に応じたHelloパケットの設定によって増減し、Bianchiモデルよりも比較的大きな値となることを実証した。