離散型信号のフラクタル的情報構造とその応用－局所的フラクタル次元を用いた信号処理の一方法

摘要

本論文では、3次元空間における離散力学系軌道をある種、の離散型信号として見立て、軌道上に有限の短い処理ユニットをのせ、局所的フラクタル次元（LFD）を定義した。処理ユニットを順次進行方向にスライドさせて得られる移動LFDを用いて、信号のフラクタル的情報構造を評価する一方法を提案した。一例として、各座標値がロジスティックに時間発展する時系列を取り上げ、カオス的な変動を与えるコントロール·パラメタの限定的な範囲では、移動LFDの確率分布が概ね正規分布になることを、コンピュータ·シミュレーションにより明らかにした。また、コントロール·パラメタと局所的フラクタル次元の平均値·標準偏差やSN比との関係も調べた。この提案手法は、一般の確率過程にもそのまま適用可能であり、統計的品質管理の一方法としても幅広い応用が可能である。