温度勾配を付与した状態におけるポリエチレングリコールの結晶化

摘要

高分子材料を含むソフトマターは，多様な相転移を示す特徴がある．近年，ソフトマター研究が盛hに行われており，相転移温度を迅速かつ精度良く決定する必要性が益々高まってきている．例えば高分子溶液の相分離温度の精確な決定には光散乱法が常法であるが，時間がかかるのが難点である．迅速かつ高精度で相分離温度を決定する巧妙な方法として，温度勾配を付与する手法が挙げられる．また，温度勾配の付与は新しい外場印加の試みとして，期待が持たれる．温度勾配を付与できる高精度の装置は市販されていなかったため，我々はこれを自作してその性能を評価し，さらにパラフィンを試料に用いてオーバーシュート結晶成長という興味深い現象を見いだした．すなわち，パラフィン試料の融点を越えて結晶成長が起こり，その後，成長最前線（成長フロント）は後退し，やがてゆっくり本来停止すべき位置まで戻ってきて結晶成長が停止するというものである．