濃厚臭化リチウム水溶液中での炭素鋼の耐すきま腐食性に対する黒皮およびマグネタイトの影響

摘要

LiOHやLi_2MoO_4を添加した濃厚臭化リチウム水溶液中における炭素鋼の腐食について，果皮面および不純物粒子として溶液中に存在するマグネタイトの影響を検討した．その結果，以下の結論を得た。 （1）黒皮面および不純物粒子として溶液中に存在するマグネタイトの影響により炭素鋼の自然浸漬電位は研磨部の腐食すきま再不動態化電位よりも貴化する．このため果皮表面上に部分的に存在する研磨部においてすきま腐食の発生確率が増大する。 （2）電位黄化の要因として,果皮面の存在によって主に鉄のアノード反応が抑制されること，また不純物粒子としてのマグネタイトの存在によってカソード電極面積の増大やFe（Ⅲ）の還元反応の寄与等によってカソード反応が促進されることが考えられる。 （3）黒皮面および不純物粒子として存在するマグネタイトの影響によって研磨部のすきま腐食の発生確率が増大することへの対策として，亜硫酸ナトリウム等の還元剤を添加することが有効である。本研究を遂行するにあたり，ご指導いただいた京都大学工学部教授小久見喜八先生に深く感謝いたします．