リン草におけるナシマルカイガラムシ歩行幼虫発生時期の解明

摘要

ナシマルカイガラムシはリンゴ、ナシ、カンキッ類など多くの果樹に寄生する広食性の害虫である。リンゴの果実がこの害虫に寄生されると寄生部位の周辺が赤く変色し（写真1）、その商品価値が低下する。 またこの害虫が枝や幹に高密度で寄生すると枝枯れや樹勢の低下が起こり、その被害は複数年に及ぶこともある。 リンゴなどの落莫果樹では近年、複合交信洩乱剤を利用した減農薬栽培体系が普及しつつあるが、それに伴いこの害虫の発生が報告されるようになってきた。ナシマルカイガラムシに対する有効な天敵は報告されておらず、天敵による密度抑制が期待できないことから、発生が認められたときには殺虫剤による防除が必要になる。 リンゴにおけるこの害虫の防除には、休眠期の機械油乳剤散布が有効であるが、積雪の多い地域では年により雪が残り、休眠期の防除が行えない場合もある。このため、歩行幼虫を対象とした効率的な防除時期を明らかにすることが必要であるが、東北地方北部におけるこの害虫の発生生態に関する報告は少ない。