ホルモンレセプター，HER2状況別にみた乳癌術前化学療法の治療成績

摘要

要旨目的:ホルモンレセプタ一(HR)， HER2状況別にみた乳癌術前化学療法の治療成績を検討する。対象:2004年3月-2009年1月までに当科で術前化学療法を施行した腫瘍径3 cm以上もしくはN1以上の浸澗性乳癌107例。投与方法:2005 年12月まではepirubicin/cyclophosphamide (EC)-docetaxel (DTX)療法，2006年1月からEC-weekly paclitaxel (PTX) 士trastuzumab (T)療法，2008年2月以降はHER2陽性例では同様のレジメンを維続し，HER2陰性例では以前のEC-DTX療法を選択した。結果:107例(EC-DTX56例，EC-PTX37例，EC-PTX+T14例)における臨床的効果はCR18例， PR 74例，SD12例，PD3例，奏効率86.0%であった。組織学的効果は狭義のpCRが14例(13.2%)得られた。狭義のpCR 率をHR別にみると，ER， PgRとも陽性例1.8%, ER陽性，PgR陰性5.3%, ER, PgRとも陰性例4Q.0%と陰性例で有意に高率であった(p<0.0001)。 HER2別では陽性47.8%,陰性3.6%と陽性例で有意に高率であった(p<0.0001)。主な有害事象としてgrade 3および4の白血球減少を57.9%，好中球減少を67.3%， grade 3の発熱性好中球減少症を11.2%に認めた。考察:HR陰性例，HER2陽性例では，術前化学療法により高いPCR率が期待できるとめ結果を得た。特にHER2陽性例にはanthracydine投与後にtaxane, trastuzumabを併用する術前化学療法が有効で，よい適応と考えられる。