意識障害を伴う在宅診療例における補剤投与後のリンパ球数の推移

摘要

在宅診療では感染症併発は介護サービスの利用上の問題や介護者の負担を増加させ，在宅療養を断念する要因ともなる。 当科では在宅診療中の意識障害遷延例の全身状態の維持に補剤を用いているが，補剤の有効性を検討するため以下の検討を行った。 検討症例は在宅診療後に補剤投与を開始した意識障害遷延例5例（脳内出血3例，脳梗塞1例，頭蓋咽頭腰1例）である。 投与した補剤は，補中益気湯4例，十全大補湯1例で，いずれも1日7．5gを経管投与した。 これらについて補剤投与前2か月から投与後6か月までの末梢血白血球数，リンパ球数，血清アルブミンの値を検討した。 5例全例で補剤投与後白血球増多が改善し，低値であったリンパ球数が正常範囲に増加した。 また，これらの変化は投与後1か月には認められた。 血清アルブミン侶は投与前後で低値のままで変化しなかった。意識障害遷延例ではリンパ球数が低下するが，今回の結果から補剤は意識障害例の免疫能，感染防御機能を改善する可能性が示唆される。 在宅診療では感染症は大きな問題であるが，補剤は全身状態の安定化に有用と考える。