(S037-2)反応拡散を利用した純鉄およびSUS430 に対する組成傾斜アルミナイド被膜の作製

摘要

近年，鋼材表面に対してアルミナイド被膜を形成して，耐食性や耐酸化性を付与する表面処理が見直されている．これにより，安価な炭素鋼を耐環境性鋼材として使用できるほか，ステンレス鋼ではNi等の高価で稀少な合金元素の添加を不要とし，安価な鋼種でも高い性能が寄与できると考えられる．また，アルミナイド被膜の原料となるアルミニウムは安価な素材であり，スクラップ鋼を再溶解する際に容易に鉄と分離できるなどの，高いリサイクル性を合わせ持つ．しかしながら，従来の溶融メッキで形成されるアルミナイド被膜は，Al-rich なFe2Al5 を主たる構成相として脆性的である．そこで，アルミナイドの組成が，延性的なFe-rich 側からAl-rich 側まで連続的に傾斜した被覆層の形成を試みる．本研究ではその製造プロセスとして，積層クラッドと熱処理を用いた手法を開発する．2 種類の金属の薄板を交互に積層させ，所定の温度で熱処理すると，異種金属間の界面に金属間化合物が生成する．Fe-Al2 元系状態図にはFe とAl の間にいくつかの金属間化合物が存在するため，加熱温度と保持時間を制御することで，組成および組織形態の傾斜化が可能である．これまでの研究により，Al の融点より比較的高い温度で加熱すると，Al が側面へ流れ出て，Al の濃度が減少することが分かった．そこで，2 段階の熱処理を施し，1 段階目でAl-rich なFe2Al5 からなる被覆層を形成させ，2 段階目の加熱により組成の傾斜化を試みる．本研究ではアルミナイド被膜の組成傾斜に及ぼす加熱温度と保持時間の関係を明らかにする．