9Cr-V-Nb鋼におけるMX炭窒化物の相平に関する理論的考察

摘要

NbおよびVを主要構成元素とするMX炭窒化物は長時間高温安定性が高く，高Crフェライト系耐熱鋼のクリープ強度を向上させる重要な析出強化因子である。 著者らは前回，改良9Cr-1Mo鋼のオーステナイト（γ）相中に析出するMX炭窒化物の平衡組成は温度に大きく依存し，1150℃と1200℃ではγ相中転高Nb濃度のMX炭窒化物が，1100℃以下では高Nb濃度と高V濃度の異なる組成のMX炭窒化物が析出することを明らかにし，（γ相＋NbX＋VX）三相共存領域を実験的に決定し。 一方, Inoueらは, Fe-Nb-V-C-N系モデル合金を用いてγ相とMX炭窒化物の相平衡に関する検討を行い，MX炭窒化物のNbとV, およびCとNの相互作用パラメータを決定している。 そこで本研究では，Inoueらが求めたパラメータを用いて9Cr-V-Nb錦におけるγ相とMX炭窒化物の平衡組成を計算して実験結果と比較し，MX炭窒化物の相平衡に関する理論的な検討を行った。