ス卜レス顆粒の生理機能と疾患

摘要

ストレス顆粒は低酸素，小胞体ストレス，熱ショック，ウィルス感染などの特定のストレス刺激によって，細胞質内に一過性に形成される点状の構造体であり，その本体はmRNA， 40Sリボソーム，およびRNA結合蛋白質などからなる複合体である.ストレス顆粒が形成されると，多くのmRNAが顆粒内へ取り込まれ，蛋 白質への翻訳が一時的に停止する.したがってス卜レス顆粒は，ストレス環境下で異常蛋白質の蓄積を防ぎ， さらなる細胞損傷を回避するス卜レス適応機構であると考えられている.さらに最近，ス卜レス顆粒が多彩な シグナル伝達分子とも相互作用して，ストレス応答シグナルを制御する多機能構造体であることが見出され， 強く注目を集めている.また近年，ストレス顆粒の機能異常が神経変性疾患，癌，ウィルス感染などの病因? 病態にも深く関与することが示されており，ス卜レス顆粒がこれら難治性疾患に対するあらたな治療標的と なる可能性が指摘されている.本稿ではス卜レス顆粒の形成機構とその生理機能，および疾患との関連について概説する.