はじめに

摘要

腎臓領域においてネフローゼ症候群は，症状が重くかつ治療に難渋することが多い疾患 である.治療は通常長期にわたり，薬剤が効きにくい治療抵抗性や，いったん寛解しても 再発を繰り返す頻回再発例が散見される.進行すると腎機能が徐々に低下して，透析や移 植を必要とする末期腎不全に至る難病である.そのため，厚生労働省難治性疾患克服研究 事業のなかの進行性腎障害に関する調査研究班において，ネフローゼ症候群は対象疾患の ひとつとして取りあげられており，診断基準の確立，疫学データの収集と患者データべ一 スの作成，症例登録の推進，診療ガイドラインの作成と普及，社会や患者への広報活動な どが，一般社団法人日本腎臓学会との緊密な連携のもとに行われている.一方で，ネフ ローゼ症候群は病因が不明で，確立された治療法がないのが現状であり，患者にとっても 医療者にとっても根本的な治療法の確立が望まれている.現在，国が進めている指定難病 への登録に向けて，さきに述べた厚生労働省研究班および日本腎臓学会の関係者が鋭意努力している.