グリオブラス卜一マ（膠芽腫）に対する あらたな分子標的治療戦略

摘要

グリオブラストーマ（神経膠芽 腫）は，脳?脊髄などの中枢神経系 腫瘍のなかでもつとも予後の悪い 悪性腫瘍である.原発性脳腫瘍の約10%を占め，WHO分類でも Grade IVともつとも高悪性度に分 類されている.グリオブラスト一 マは発症から平均生存期間が約1 年であり，5年生存率が約10%と 他の臓器の悪性腫瘍と比較しても 予後が悪く，難治性である.可及的な腫瘍摘出術に加えて放 射線照射と化学療法（テモゾロマ イド）を併用することが一般的な 治療法であるが，再発率も高く， 再発した場合には有効な治療法は 基本的にはないとされる.脊髄に 限っては脳への転移?浸潤が生命 予後に直結するため，患者との十 分なinformed consentのもと脊 髄離断術を行うことがある.離 断術を行った場合，約半数の患者 は生存可能であるが，両下肢麻痺 や膀胱直腸機能障害となり，いわ ゆる車椅子の生活を余儀なくされ る.離断を行っても，なお増大す る場合は離断以遠の脊髄を摘出し なければならず，複数回の手術や 麻痺を考えると患者への負担は計 りしれない（図1).