肝性脳症?高アンモニア血症に対する亜鉛補充療法-慢性肝疾患における亜鉛の意義

摘要

亜鉛は成長や免疫など多くの生命現象にかかわっているが，肝硬変では吸収低下や尿中排泄増加により亜 鉛が欠乏している症例が多い.肝性脳症のおもな原因物質のひとつであるアンモニアの大半は肝の尿素回路 で代謝されるが，そのなかの酵素であるオル二チン卜ランス力ルバミラ一ゼは亜鉛酵素であり，亜鉛欠乏に よってその機能が低下する.このため肝硬変でみられる高アンモニア血症などの窒素代謝異常は亜鉛欠乏が 一因となっており，亜鉛補充療法はアンモニァ低下作用とともに肝性脳症の改善効果もみられる.ラクチ卜一 ルなど従来の高ァンモニァ治療薬は腸管からのアンモニァ吸収を抑制するが，亜鉛は肝での代謝能を回復させるため，作用機序が異なり，併用することで効果がさらに促進される.また，BCAA製剤は肝硬変の予後を 改善させる効果を有するが，亜鉛製剤との併用はその有効性を促進する可能性も示唆される.今後，亜鉛代謝 の詳細や亜鉛と病態との関連，さらには亜鉛補充療法の長期効果も含めた検討が期待される.